英文契約書
 

国際契約に関するミニ知識

国際契約のアプローチについて
1言葉の違い(英語と日本語)、2外国の法律や文化や条約、3国際私法 (それぞれの国の法律の適用方法の違い)の三つのベクトルと違う知識をもとに理解する必要があります。

「意思表示」という日本語がある。これはシビルローの中の概念であり、意思表示の中で、錯誤があり、心裡留保があり、これはコモンローの国では、INTENT「意志」でDECLARATION (MANIFESTATION) OF INTENTとは言わない。
 
裁判所の名称
supreme courtという用語は、「最高裁判所」と同じと考えます。ワシントンDCにあるsupreme court of the United Stateはたしかに「連邦最高裁判所」ですが、ニューヨーク州にあるsupreme courtは日本の地方裁判所に相当する第1審裁判所のことを指します。次は、appellate division of Supreme court,最高裁判所はcourt of appealといいます。

「訴訟」のという英語はどう表現するかご存じでしょうか。
日本語で「訴訟」といえ原則意味は一つですが。英語の場合、"action, suit, lawsuit, litigation"などがあります。action(take action)場合の「訴訟」(主として損害賠償請求事件)に使われていました。I WILL SUE YOU (訴えてやる) suitは 又は、Lawsuitは、face a law suit 訴訟を起こされるface a (law) suit、 win a law suit 、勝訴する などの一般的な訴訟全体を指す。win a law suit against LIGIGATION 訴訟、malpractice litigation、 infringement litigation

原告被告
PLAINTIFF, claimant(主に民事)、complainant(控訴人)
DEFENDANT(被告), RESPONDENT(応訴人), ACCUSED(被告人)
 
1. 外国の法制度
(1) 世界にはcommon lawの国とcivil law(成文法)の二つの法制度の流れがある
common lawとは、コモンロー(Common Law)とは、中世イギリスにおいて、国王の裁判所が伝統や慣習、先例に基づき多くは書面のみによって裁判をしてきたことによって発達した法概念であった。
 
SOLICITOR
BARRISTER
一般にイギリス法及びその法律を継受した国(アメリカ(除くルイジアナ州)、カナダ(除くケベック州)オーストラリア、ニュージランド、インド、マレーシア、シンガポール、香港など)があり、中世イギリスの封建制の始まりのころから、地域的な習慣をもとにしたイギリスの国王裁判所が下した判例の集大成。マグナカルタ(権利の章典)は初めて国王の権利を制限したものとして有名)

Civil Lawの国 ローマ法(古代ローマ時代に制定された法律)の流れをくみ、ゲルマン法とともにヨーロッパの法律の源流となったもの。成文法とも呼ばれ、特徴としては民法などの法典編纂によって法体系を形成してきた歴史を持つ。フランス法、ドイツ法などが中心。日本は明治維新で、ドイツ法の影響が強い。フランス法の影響が強い国として、イタリア、スペイン、ブラジル、ベルギーなどがあり、ドイツ法の影響が強い国として、日本、中国、韓国、台湾、タイ、ギリシャなどがある。
日本の法律 明治のフランス人ボアソナードが民法を起草し、その後ドイツ法の影響を受けた学者などが改編を重ね、現在の民法の土台となっている。つまり、日本の民法や刑法は、フランスとドイツの法律に日本の思想を反映した法律ということがいえる。後に、日本の法律の影響を受けた法律として、中国、台湾、韓国などがある。
コモンローとシビルローとの一番大きな違いは、法典が存在しないこと。法律がないのではなく、法典がない。法体系を編纂したものがない。(民法)。これは契約を締結する上で非常に重要なことで、日本のようなシビルローの国では、日本の民法や商法をベースに契約を締結するのに対して、基本となる民法がないので、判例や慣習法を基にした法概念の中で契約を結ぶことになる。従って、民法に立ち戻る、若しくは民法の解釈を適用するということができないので、すべて合意したことが基本となる。(といっても法律がないわけではない)
 
(2) Equity (衡平法)とはなにか?
イギリスの国王の裁判所においての救済方法は、主にコモンロー上の救済(金銭賠償)であった。金銭賠償だけでは不十分な分野において、国王評議会の有力成員である大法官Chancellorが担ったコモン・ローの補正としての衡平(法)および大法官府裁判所の起源である。そのコモンローでは、王から土地を譲り受けた領主の相続は、日本の家督相続のように長男が領地を単独で相続することになっており、領主が息子などに代替わりする際に、高額な代替わり承認料という金額を王に収める必要がった。そこで、領主は、そのような承認料を回避するために、領地の名義を誰か信頼のおける人(複数)に委ね、領地の耕作は相変わらず自己でしてそこから発生する利益を自らが指名する人(子供や教会など)にあげるという仕組みを作りました。これが、信託の発祥となりました。
この時に、名義を委ねた人が、その権限のもとに収益や場合よっては土地を売り渡すなどの問題が発生した。それをコモンローの王の裁判所に訴えても判所であるコモンロー上の裁判所(これまでの先例や判例を中心とした書面主義の裁判所)に訴えても、裁判所は受託者は表見的には土地の所有者として、裏切られた委託者が救済されることは難しいという結論しか下さなかった。そこで、委託者は、裁判所ではなく、chancellor(大法官)と呼ばれる王が指名した聖職者にこの問題を委ねたところ、大法官による調査の結果、受託者の背信的行為が明らかになり、受託者は正式な権利者ではあるが、法と衡平(エクイティ)の見地から、受託者を罰することになった。
これが中世イギリスのエクイティの概念の始まりであり、それがイギリスの植民地であったアメリカにもわたり、コモンローとエクイティの両方の概念を中心としたアメリカの法体系ができました。エクイティ上の分野で発達した法概念は、このように信託をはじめ、Specific Performance(特定履行), Injunction(差止め命令)などがあります。
コモン・ロー裁判所が管轄権を有していないが実質的に見て正義に反する結果を招いている事件と,管轄権はもつが,原告側の貧困とか,相手方の暴力・圧制あるいは役人や陪審の瀆職(とくしよく)による妨害などから,国王の特別恩寵を求めざるをえない事件とがあった。
 
大法官(load of chancellor)による個別救済方法をequity (衡平法)という。具体的には、差止め命令、特定履行、といった金銭賠償以外の救済方法や信託法などの分野をさす。NDA(non disclosure agreement)の中で、エクィティ上の救済に対しても同意するといった文言がでてくることがある。
余談ではあるかが、会計上のequityとは、資本金と内部留保の自身で調達した自己資本を指す。資産から負債を引いた純資産とも同義?equity finance 自己資本調達のための新株発行による資金調達。。
 
(3) 世界共通の法律(条約)国際契約に関連する条約、Hague Convention(ハーグ条約)やIncoterms(インコタームズ)など
 
(A)ハーグ条約(ハーグやヘイグと発音する)オランダとは言わないことを注意する(Holland 又はNetherland である)
国際法の世界では、条約は、国内法の上位規程と考えられている。
国際契約に関連する条約、
 Hague Convention(ハーグ条約)、ハーグ国際司法会議(Hague Conference on Private International Law)、日本をはじめ、61か国が加盟国。
 主な条約、
 「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約」、
 「外国公文書の認証を不要とする条約」、
 「送達に関する条約1965」、
 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約2014年日本発効」、
 
(B)ウィーン(ドイツ語Wien、英語(Vienna)売買条約(国際物品売買契約に関する国際連合条約(2009年日本批准)、United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods (Vienna, 1980)
加盟国:米国、カナダ、中国、韓国、ドイツ、イタリア、フランス、オーストラリア、ロシア等、77カ国が締約しています。
適用:事者の所在する国がいずれも締約国である場合は自動的にウィーン売買条約が適用されます(第1条第1項)。また一方が非締約国であっても、国際私法により締約国の法を適用すると導かれた場合には、同条約が適用されます(第1条第2項)。
相違点
 
1. 日本民法では、契約の成立時期は、「承諾の通知を発信した時」(民法526条。発信主義)に対して、ウィーン売買条約では、契約の成立は承諾の「到達時」(到達主義)。
2. 申込に対する承諾の際に、変更が、注文内容に実質的に変更を加えない程度のものであるときは、買主が遅滞なく異議を述べない限り、契約は条件を付加した承諾の内容で成立するとされています。
カウンターオファー
※(商品を100ドルで売ってください、景品をつけれくらたら100ドルで買います)
3. 買主は、製品を受領した後、可能な限り短い期間内に検査をする義務を負います。そして合理的期間内に不適合の通知を行わなかった場合には、製品の不適合を主張する権利を失うことになります。
4. 損害賠償の範囲(ウィーン売買条約では、損害賠償の範囲として、得られるはずであった利益(逸失利益)の喪失についても損害賠償が含まれることが規定されています。他方日本法では、瑕疵があったというだけでは逸失利益の賠償は原則としてできませんので、この点は買主側に有利な規定といえます。)
5. 損害軽減義務(ウィーン売買条約では、契約違反を主張する当事者において、その損害を軽減する合理的措置を講じる義務が規定されています。)
 
(C)インコタームズ(Incoterms)2010
インコタームズ(Incoterms)とは、国際商業会議所(ICC)が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則(International Commercial Termsの略)
International Chamber of Commerceとは、第一次世界大戦(1914~1918)の後、荒廃したヨーロッパの産業・経済の復興と自由な国際通商の実現を目指して、1919年10月、米・英・仏・伊・ベルギーなどの産業人4,000人が米国アトランティック・シティに集まって開催された「アトランティック国際通商会議」をもって嚆矢(こうし)とする。その結果、1920年5~6月パリに於いてICC創立総会が開かれ、以来民間企業の世界ビジネス機構として活動している。世界130カ国以上の国内委員会等及びその直接会員である企業・団体より構成されている。
目的は、国際貿易のルール作り、紛争解決方法(商事仲裁)の情報提供など
EXW Ex Works 工場渡
FOB Free On Board 本船渡
CFR Cost and Freight 運賃込
CIF Cost, Insurance and Freight運賃保険料込
(4) 米国法は、連邦法及び州法の二つの法律が存在する。
(a) 連邦法 1776年7月4日の独立宣言、1987年合衆国憲法の採択)により当時13州による連邦政府の誕生。連邦政府の優位性。連邦法、「知的財産法」「移民法」「破産法」「通商法」などを専属的に管轄する。及び州政府の権限の制限、州法は連邦法に抵触することはできない。
(b) 州法「契約法」「親族法」「刑法」などより具体的には、「教育」「州の税金」「事業や専門職の認可や規制」「連邦以外の裁判所と刑事司法制度の創設および監督」「州全体の警察組織や州の刑法の制定」「婚姻や相続などの家族関係」州にもそれぞれ憲法が存在し、州も地方裁判所、控訴裁判所、最高裁判所が存在する。
 
(5) 米国契約法による契約の定義1.Mutual Assent,2. Consideration (bargained for exchange of something value) and 3 No Defense
1. 申込(offer)と受諾(accept)
2. Consideration(約因)
3. Minor, Mistake,
刑法の構成要件、罪刑法定主義において定めれれている、違法性阻却事由、責任
(6) UCC(Uniform Commercial Code)とは?
米国の民法ないし商法は、州ごとに異なるが、州際の商取引を円滑にするため、アメリカ法律協会(American Law Institute, ALI) と、アメリカ法曹協会(American Bar Association,ABA)によって組織される統一州法委員会全国会議(National Conference of Commissioners on Uniform State Laws, NCCUSL)が1952年にこの法典を発表した。UCCは主に動産の取引について規定している。
UCC それ自体は、統一商事法典という名称にもかかわらず、アメリカ合衆国の連邦法ではなく、各州にその採択を薦める単なる法案モデルにすぎない。しかし、UCC は殆どの州で、若干の修正を加えられつつも、州法として採択されており、実質的にアメリカの商事法であるといえる。
リステイトメント(Restatement)は、アメリカ合衆国の各州の州法と判例法の現状を分析し、おおよその共通事項を各法分野ごとに法典の形にして注釈をつけたものである。リステイトとは、各州の判例法を収集・分析して「再び記述し直す」(re-state)という意味である。
Law Journal(ロースクールがだすレビュー)
(7) 「Legal Jargon」法律専門用語
1. 期日や数字などを表現する場合の注意点Onとby、(more or less や before/after)more than(とは、その数値より多い数をいう)
期限や数量を表すときに気を付ける必要がある。 More than 10,000 US dollar (1万ドル以上ではなく、1万ドルを超える金額) equivalent to or more than 10,000 dollar
Before Friday (金曜までに ではなく、金曜日よりも前に)、金曜までにであれば、on and before Friday,と書かれていなければならない。
2. Shall、Must、 Shall not、Will、Mayなどの助動詞の意味。
しなければならないは、mustを使用しない。必ず、shallをつかる。又はhave obligation to, be obligated to など何々する義務を負うと明確に記載する。
英語の助動詞は、中学の頃たくさんならいましたね、can, must, may,shall,will, should, would, could,
3. Make(exert) a Reasonable effortsとは「合理的努力義務」 義務履行者の事業上の利益を優先することが許容され,制限的ではあるものの一定のコストを費消して努力義務を履行することが場合によって求められる一方,義務履行者の商業的な利益を犠牲にすることまでは求められない。
「契約商品の販売の促進を図る合理的努力をする義務を有する」
〇本人がしている通常の範囲での宣伝活動をする。
×TVコマーシャルなどを打つ
4. made and entered into、 null and void、 force and effect、by and between、any and allのような同じ意味の単語を重ねる意味は。
5. Hereinunder hereinafter、heretoはどんな意味。
「 This Agreement constitutes the entire agreement, and supersedes all prior agreements and understandings (both written and oral) of the parties hereto with respect to the subject matter hereof, and cannot be amended or otherwise modified except in writing executed by the parties hereto.」
(本契約は、最終的合意を構成し、本契約の主題に係わる本契約の当事者間のすべての以前の合意と了解(書面と口頭の双方)に優先し、また、本契約の当事者が書面により履行する場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。)
上記の場合の「hereto」、「hereof」、は、いずれも「the parties hereto」=「the parties to this Agreement (本契約の当事者)」および「the subject matter hereof」 = 「the subject matter of this Agreement.(本契約の主題)」
THEREOF, (この契約以外の対象物) NOTICE THEREOF SHOULD BE GIVEN TO
6. Without prejudice to any other remedies and rights hereunderってどう訳す?~に対して偏見なく、ということではなく、「他の救済方法や権利を毀損することなく、権利に影響を受けることなく、
7. Provided, however, that..「但し」
8. pursuant to the provision of the preceding paragraph、in accordance with、「~に従って、~を基準にして」
9. Notwithstanding the provisions of preceding paragraphの意味「前項の規定に拘わらず、」
10. 英文契約書に出てくるラテン語、Bona Fide (ラテン語、善意)etc (et cetra)(and so on, and the rest)、versus, (vs) , bona fide party, bona fide effort , in lieu of ~ = ~の代わりに, per annum(一年で)、pro rata (按分、割合に応じて)、・i.e. 「id est」(すなわち、いいかえれば、)、vice versa(逆もまた同じ),estoppel 禁反言、QUASI CONTRACT(偽契約、契約に準ずる
2.英文契約書の構成と重要条文
(8) 前文になにを記載する必要があるか。This agreement (hereinafter referred as to “Agreement”)is made and entered into and by between AAA Co.,Ltd, a corporation existing under the law of () with its principal place of business at () (“Seller”) and XXX , a () national ,born on () residing at () (“Buyer”) as of the date of () with respect to purchase and sale of () (“Product”)
※ニューヨーク州法3条は、会社の表示としてcorporation, incorporated, or limited or an abbreviation of one of such words(corp., inc., ltd.)
(9) 序文(RECITALS=WHEREAS CLAUSE=WITNESSETH) とは?
日本の契約書ではあまりというかほとんど見ることがない序文。
Witnesseth
Whereas, Party A desires to sell
Whereas, Party B is willing to buy the product from Party B
(10) Definition (定義条項)XXX means thatXXX ”Party" means –AA Co.,Ltd or --kk, and, when used in the plural, shall mean both of them.
(A) 「法律」というのは、ここでは日本の法律を指す。
(B) 「リンゴ」というのは、食べることができる赤いものだけを指す。
(C) 「休日」というのは、日曜と日本とアメリカの祭日を指す。
「Business Day means any day other than a Saturday and a Sunday on which banks are open for business in Japan」(「営業日」とは、日本国において、土曜日と日曜日を除き、銀行が営業のために開店する日を意味する。)
(11) Termination (契約の終了)、契約終了の効果(Effect after Termination) と Survival Clause (残存条項)
「契約終了の効果」契約が終了しても、それに付随する賠償などを相手方に求めない。
「残存条項」契約が終了しても、引き続き効力をもつもの(守秘義務、賠償請求権など)
(12) Confidentiality(秘密保持条項) Either party shall hold in strict confidence, and shall not disclose, directly or indirectly, to any third party or make a publication of any technical, economic, financial, or other information received or discerned pursuant to this Agreement without prior written approval of the disclosing party.
NDA(non-disclosure agreement)でよく単独で契約をします。
Top Secret(極秘)
Sensitive(機密)
Confidential(丸秘、親展)
Restricted(限定開示)
ABC Personal Only(ABC社外秘)
(13) Entire Agreement (完全合意条項)がなぜ必要なのか。(This Agreement (a) constitutes the entire agreement and understanding between the parties with respect to its subject matter, and there are no promises, representations, conditions, provisions or terms related thereto other than those set forth in this Agreement; and (b) supersedes all previous understandings, agreements and representations between the parties, written or oral, with respect to its subject matter.
完全合意(Entire Agreement)これは、契約書が定めてある内容が当事者間の合意の全てであって、それ以前になされた当事者間における口頭または書面による合意はすべて失効し、契約書の規定があらゆる点で優先するというものです。これは、英米法の口頭の口頭証拠排除法則(Parol Evidence Rule)、すなわち、書面化された当事者間の契約内容について、他の口頭の証拠によって修正したり、変更したり、否認したりすることを許さないとする原則に基づくものと言えます。
(14) Force Majeure (不可抗力条項) Any delays in or failures of performance by either party under this Agreement shall not be considered a breach of this Agreement if and to the extent caused by occurrences beyond a reasonable control of the party affected, including, but not limited to: acts of God; strikes or other concerted acts of workers; fires; floods; explosions; riots; wars; rebellions; and sabotage; and any time for performance hereunder shall be extended by the actual time of delay caused by such occurrence.
これは、契約期間中に、自然災害など、当事者の意思の及ばない事象が発生し、それが原因で当事者の一方が契約上の義務を履行できない事態に陥ったときには、不可抗力として、責任を免ずるための規定です。このような時にまで、責任を課すのは、何ら過失がない当該当事者にとって、余りに酷と言えるからです。
(15) Severability (分離可能条項)とは、If any provision of this Agreement should, for any reason, be held by a court of competent jurisdiction to be illegal, invalid, or unenforceable, the remaining provisions shall not be affected or impaired, and shall remain in full force.
ある契約条項が一方当事者の国の法律に違反するため無効とされる場合でも、他の契約条項には何ら影響を及ぼさず、契約全体が無効となるわけではないのであって、当該条項が無効となるにすぎないということを定めています。
(16) Waiver/Non-Waiver(権利の放棄又は不放棄 )Failure or delay on the part of either party hereto in exercising its right of termination hereunder for any one or more defaults shall not prejudice either party's right of termination for such or for any other or subsequent default. (Non-Waiver)The waiver by either party, whether express or implied, of any provisions of this Agreement, or of any breach or default of either party, shall not be construed to be a continuing waiver of such provision, or of any succeeding breach or default or a waiver of any other provisions of this Agreement.
相手方当事者の契約違反等について、他方当事者があえて抗議等をしなかったために、結果として、暗黙のうちに認めることになってしまったとしても、その後また同様のことがあったときには、決して相手方の免責を認めるわけではないということを、念のために規定しておくものです
(17) Representation and Warranty(表明・保証条項)Each party hereto represents and warrants to the other party (i) that it is a duly organized and existing legal entity, and in good standing under the laws of its domicile; and (ii) that it has full authority to enter into this agreement.
(18) Liquidated Damages(予定損害賠償額),Punitive Damage(懲罰的損賠)といった損害賠償
当事者間で、債務不履行等の場合の損害賠償金額をあらかじめ取り決めておき、実際に契約違反があったときには当該金額を支払ってもらうというものです。これにより、損害賠償を請求する当事者は、ときに大きな負担となる損害金額の立証を省略することができます。(日本では認めれられていません)懲罰的損害も認められていません。
(19) Disclaimer (免責条項) Except as expressly provided in this agreement, this agreement excludes, and company a specifically disclaims, all express or implied representations or warranties with respect to the products, patents and know-how, including but not limited to any representation or warranty of accuracy, merchantability or fitness for any particular purpose of the products.
当事者が、契約書において、特定の事実が正しい旨明確に指摘したり、特定の権利が存在することを保証したりするものです。あえて契約書中でこうした表明と保証を行うのですから、万一、それら事実に相違があり、それが原因で相手方当事者が損害を被った場合には、相手方当事者から損害賠償を問われる可能性が高くなります。
(20) LIMITATION OF LIABILITY (責任の制限)IN NO EVENT SHALL LICENSOR BE LIABLE TO LICENSEE OR TO ANY THIRD PARTY FOR LOSS OF PROFITS OR ANY OTHER CONSEQUENTIAL, INCIDENTAL, SPECIAL OR PUNITIVE DAMAGES ARISING OUT OF LICENSEE'S OR ANY OF ITS CUSTOMER'S USE OF OR INABILITY TO USE THE LICENSED PRODUCTS, EVEN IF LICENSOR HAS BEEN ADVISED OF THE POSSIBILITY OF SUCH DAMAGES. EACH PARTY'S TOTAL LIABILITY TO THE OTHER UNDER THE AGREEMENT SHALL BE LIMITED TO THE AMOUNT EQUAL TO THE ACCUMULATED PAYMENT OF THE ROYALTIES HEREINUNDER。
まず最初にライセンサーは原則いかなる損害に対しても責任を負わない。それがたとえ損害がでると通知を受けていた場合においても責任を負わない。
(21) INDEMNIFICATION AND HOLD HARMLESS CLAUSEとは、Company Q indemnify and hold Company C and its employees and user of Products from and against any and all claims ,liabilities, losses, damages, cost and expenses including attorney fees, incurred , relating to , arising out of actual and alleged death or injury to any person, damages to any property , resulting or claimed to result in whole or in part from any actual or alleged defects in the Products.
「英語の第五文型です。Hold me harmless 目的物を害のない状態に保つという英語の第五文型です。ジョークで、Call me a taxi!Taxi!」
この条文には、二つの大きな意味の単語が入っています。一つは、alleged (主張された)被害、及び欠陥に基とづく損害、その損害には、弁護士費用が入っている。

(22) Jurisdiction (裁判管轄) 裁判管轄をどこにするか。
Jurisdiction (裁判管轄)当該契約がどの国の法律によって解釈されるかを明確に定めておく必要があります。 (conflict of laws)、万一紛争が生じたときに、どの国の法律によって紛争を解決するのかを相手方と合意しておく必要があるのです。、当事者の意思に関係なく準拠法が決定されてしまう国々があります(例えば、中南米のコロンビア等)。これらの国々の裁判所に事件が持ち込まれた場合には、仮に準拠法を日本法と契約書で定めていても、裁判所がその合意を認めず、自国の法律を強制的に適用させてしまうことがありますので、注意が必要です。契約書で準拠法を定めていないと、契約の不履行等により当事者間で紛争が生じ提訴されたときは、裁判を行う場所すなわち法廷地における「国際私法」(private international law)または「抵触法」(conflict of laws)と呼ばれる原則によって、どこの国の法律を適用するかが決定されます。
日本では、「法の適用に関する通則法」
(当事者による準拠法の選択)
第七条  法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。
(当事者による準拠法の選択がない場合)
第八条  前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。
2  前項の場合において、法律行為において特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法(その当事者が当該法律行為に関係する事業所を有する場合にあっては当該事業所の所在地の法、その当事者が当該法律行為に関係する二以上の事業所で法を異にする地に所在するものを有する場合にあってはその主たる事業所の所在地の法)を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。
3  第一項の場合において、不動産を目的物とする法律行為については、前項の規定にかかわらず、その不動産の所在地法を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。
(事務管理及び不当利得)
第十四条  事務管理又は不当利得によって生ずる債権の成立及び効力は、その原因となる事実が発生した地の法による。
(不法行為)
第十七条  不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。
「法例」という法律がありましたが、2007年1月1日から「法の適用に関する通則法」(以下、「通則法」といいます。)という法律が施行されました。この通則法は、当事者自治の原則に基づき、原則として当事者が自由に準拠法を定めることができるとの立場を採用しています(通則法7条)。しかし、準拠法を契約書で定めておかないと「当該法律行為に最も密接な関係がある地の法」(最密接関係地法)が準拠法として適用されることになります(通則法8条)。
そして、ここでいう最密接関係地は、いわゆる特徴的給付の理論により決定されます。これは、契約に特徴的な給付をすべき者が活動の拠点を有している地を最密接関係地とする考え方です。例えば、双務契約における対価としての金銭的給付は他の契約一般にも見られるため、その反対給付が特徴的給付となり、売買契約であれば、売主の常居所法または事業所の所在地の法律が最密接関係地法として準拠法となる

(23) 紛争解決方法をどう決めるのか。裁判か、Arbitration(仲裁)か。All disputes, controversies or differences which may arise between the parties hereto, out of, in relation to, or in connection with this Agreement, shall be finally settled by arbitration in Tokyo , Japan in accordance with the Commercial Arbitration Rules of The Japan Commercial Arbitration Association. The award rendered by the arbitrator(s) shall be final and binding upon both parties.
 

(24) letter of Intent (予備的合意書)(レター・オブ・インテント)、覚書(Memorandum of Understanding)や、原則的合意書(Agreement in Principle)
 

 

米国税関現金没収の返還請求

 

 米国においても、現金1万ドル以上を持ち込む場合には、入国時に税関に「申告」義務を課せられております。これは現金を持ち込んではいけないということではなく、申告する義務があるということです。また入国時もそうですが、米国から出国する時も1万ドル以上所持しているときは申告する義務があります。
 
この義務を怠ったときに、税関職員に発見されればその現金は、「没収」されます。人の財産を勝手に没収するとはどうかと思いますが、この没収は、米国連邦法31篇5317条に基づいて正当に米国の税関が行っている正当な措置なのです。
 
ただ、後日この現金に対して、マネーロンダリングなどの不正な目的で所持していたのではなく、正当(legtimate)な目的であることを証明し、また、そのお金の源泉も合法的な行為によって入手したものであることを証明できれば、返還されます。
 
この通知義務を怠った場合には、50万ドル以下の罰金又は10年以下の懲役が科せられるとなっていますので、後日申告した場合も罰金を差し引かれることがあります。金額と目的が不法なものだと認定された場合には、もちろんお金は返還されませんし、場合によっては刑事罰を科せれることもあります。
 
 
 

The report is required by 31 U.S.C. 5316 and Treasury Department regulations (31 CFR Chapter X). 

 

PENALTIES: Civil and criminal penalties, including under certain circumstances a fine of not more than $500,000 and Imprisonment of not more than ten years, are provided for failure to file a report, filing a report containing a material omission or misstatement, or filing a false or fraudulent report. In addition, the currency or monetary instrument may be subject to seizure and forfeiture. See 31 U.S.C.5321 and 31 CFR 1010.820; 31 U.S.C. 5322 and 31 CFR 1010.840; 31 U.S.C. 5317 and 31 CFR 1010.830, and U.S.C. 5332. 
 

 

NDA締結の留意点

契約締結チェックリスト
 

契約当時者の特定が正しくされているか。

法人形態はそれぞれの国において様々です。当事者がまずきちんと特定されていない契約は、怪しい契約であることが多いといえます。
 

WHAREAS(前文)の記載は正しいか。

これは英文契約独特のシステムで、契約(合意)内容には含まれていないのですが、これまでの契約に至る経緯などを記載しているものです。お互いの当事者の意向や客観的事実を書くことも多いです。但し、NDAにはこのWHAREASまで書くことは稀です。
 

定義条項

日本の契約でも「以下○○と称す」というようにある事象を特定し、この契約上ではこの名詞はあるものを特定することになる。例えば、「洗剤」という言葉には、「人体や機械などの洗浄を目的とした、界面活性剤を主成分とする製品」を言うとしますが、契約で使用する洗剤は、○○社が○○年から○○年までに製造したでリン酸塩を使用したものに限定すると契約で記載すれば、その他の洗剤は契約の中では洗剤とは扱われない。
 
NDAにおいて、何を機密情報として取り扱うかは非常に重要な問題である。いわゆる企業秘密に関しては、NDAを締結していなくても、不正競争防止法においては、「営業秘密を保有する事業者からその営業秘密を示された場合において、不正の競業その他の不正の利益を得る目的において、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為」は、同法第2条第7号で「不正競争」と定義されており、不正競争に対しては差止請求(第3条)や損害賠償請求(第4条)が認められる。
 
ある企業から提示された契約書には、」企業から相手方に渡すすべての情報を機密情報とする」という一見訳の分からない契約書にも世の中には存在します。情報を受けるものとしては到底簡単にサインできるものではありません。
 

機密保持の期間は妥当か、サバイバル条項とは?
どのように情報を扱うと目的外使用となるか?
損害賠償責任の範囲は?弁護士報酬を含むとあるがどの程度までか。
ALLEDGED DAMAGEとは?
競合避止はどこまで認められるか。
権利の非放棄(Non Waiver)とは
分離可能条項(Severability)とは?
紛争解決方法は、裁判か仲裁か
準拠法の定めは?

 
 
 


 

機密保持契約

 
NDAを締結する上での留意点
1.契約主体の法人は確かに存在するか。
2.機密情報の範囲は明確であるか。
3.機密義務違反の罰則及び賠償方法は妥当か
4.準拠法はどこに定めているか。
5.紛争解決方法はどう設定されているか。
 


 
 

 
 
   
 

 
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・ライセンス契約
・業務委託契約
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